漢字一字の動物【鶩・鼈・獺・鸛】
・鶩(アヒル)
「鶩」の訓読みは「あひる」、音読みは「ボク」「ブ」。ちなみに、この字には「速く走る」という意味もある。ちなみにアヒルは「家鴨」とも書く。
中国の戦国時代の詩人である屈原の言葉に『鳳凰在笯兮鶏鶩翔舞』というものがある。これは「鳳凰は笯(とりかご)の中に押し込められ、鶏やアヒルが空を飛ぶ」という意味であり、「優れた人物が地位に恵まれずに埋もれている一方で、取るに足らない者が我が物顔に振舞っている」ことを指している。
・鼈(スッポン)
「鼈」の訓読みは「すっぽん」、音読みは「ベツ」「ヘツ」。
「鼈甲」(べっこう)という言葉は「亀の甲羅」「スッポンの甲羅」を意味する。べっこう飴は漢字で「鼈甲飴」と書く。
「鼈(べつ)人を食わんとして却(かえ)って人に食わる」という言葉は「人を食べようとしたスッポンが、逆に人に捕まって食べられること」という意味であり、「自分の力も考えないで人を害しようとして、かえって自分が災いを受けること」のたとえである。
・獺(カワウソ)
「川獺」とも書く。「獺」の訓読みは「かわうそ」「おそ」、音読みは「ダツ」「タツ」。
「獺祭」(だっさい)という名の日本酒があるが、「獺祭」とは、捕えた魚を岸に並べるというカワウソの習性を指す言葉である。カワウソが岸に魚を並べている様子がまるで祭りのように見えることから「獺祭」という。
また、唐の詩人である李商隠が文章を作るときに、まるで魚を並べるカワウソのようにたくさんの書物を自分の周囲に置いて参照しており、自らを「獺祭魚」と号したことから、「獺祭」には「詩文を作るときに多くの参考書を周囲に広げておくこと」という意味もある。
正岡子規は自らを「獺祭書屋(だっさいしょおく)主人」と号したことから、彼の忌日(9月19日)は「獺祭忌」という。
ちなみに「獺祭」「獺(おそ)の祭り」「獺魚(うお)を祭る」は春の季語だが、「獺祭忌」は秋の季語である。
・鸛(コウノトリ)
「鸛」の訓読みは「こうのとり」、音読みは「カン」。
この字が含まれるものとしては、唐の詩人である王之渙の漢詩『登鸛鵲楼』(かんじゃくろうにのぼる)がある。この漢詩を国語の授業で習ったことのある人がいるのではないでしょうか。