政教分離ってなに?

 12月に入り2022年も終わりが近づいてきました。今年を振り返る上で触れておくべき事柄はたくさんありますが、特に政治と宗教の関わりが広く注目を集めたので、今回は「政教分離」について説明していきます。

 ※この記事は厳密性よりも分かりやすさに重点を置いたものですので、ご注意ください。また、記事の内容は特定の団体を支持したり批判したりするものではありません。


政教分離ってなに?

 「政教分離」を一言で言うと、政治と宗教は結びついてはならないという原則である。

 もう少し詳しく言うと、国家や地方公共団体(都道府県・市区町村)が宗教団体や国民の信仰に干渉したり、宗教団体が政治に干渉したりすることを禁じるという原則である。

 ※「干渉」とは、他人を自らの意に従わせようとすることである。

 

政教分離の目的はなに?

 政教分離の目的は、日本国憲法に規定されている「信教の自由」を保障することであると言われている。

 「信教の自由」とは、宗教を信じたり信じなかったりする自由のことである。宗教を信じるか信じないか、どの宗教を信じるかは個人の自由であるということである。

 ※ちなみに「保障」とは、「ある状態や状況が損なわれないように保護すること」である。

 日本国憲法第20条には以下のように書かれている。

 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

 ②何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

 ③国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

日本国憲法 | e-Gov法令検索

 
 

 また、日本国憲法第89条には以下のように書かれている。

 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

日本国憲法 | e-Gov法令検索


 つまり日本国憲法は、信教の自由を保障するために、国家が特定の宗教をひいきしたり、国家が特定の宗教を信じることを国民に強制したりすることを禁じていると言える。国家はどの宗教に対しても中立であることが求められるとも言える。

 特定の宗教が国家によってひいきされると、その宗教以外の宗教を信じている人の信教の自由が侵害されるおそれがあるのだ。

 特定の宗教が国家と結びつくことによって、他の宗教への弾圧が起った例は歴史上に世界中にたくさんある。日本の例でいうと、戦前・戦時中の大日本帝国では実質的に国家と神道が結びついて、キリスト教などの宗教が弾圧された。


政教分離をめぐる事件

津地鎮祭事件

 1965年(昭和40年)に三重県の津市は、市立体育館を建設する際に地鎮祭を行い、その費用として市のお金を使った。

 ※「地鎮祭」とは、工事を行うときに、工事が無事に終わるように神社の神主に安全祈願をしてもらう儀式である。

 これを「地方公共団体(政治)と神道(宗教)の結びつき」とみなすのかどうか、「地方公共団体が中立の立場を守らなかった」とみなすのかどうか、つまり政教分離の原則に反するかどうかが問題となった。

 結果的に最高裁判所はこのように示した。津市は宗教的な目的や意義を持って地鎮祭を行ったのではなく、あくまで社会の一般的な慣習に従って地鎮祭を行った。また、津市が行った地鎮祭は神道を援助・助長・促進するものでもない。つまり、政教分離の原則に反していない。

 この判決により「政教分離」が、国家と宗教の関係を全く許さないという原則ではなく、国家と宗教の関係が宗教的な目的や意義を持ち、その宗教を援助・助長・促進・圧迫・干渉するものとなることを許さないという原則であることが示された。

 詳しくは 裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan をご覧ください。


愛媛玉串料事件

 1980年代に愛媛県知事は、戦死者の遺族のために県のお金から靖国神社に玉串料を支払った。

 ※「靖国神社」とは、東京都千代田区にある神社である。戊辰戦争や明治維新の際に亡くなった人の霊をまつるために創建されたが、後に日清戦争・日露戦争・第二次世界大戦などにおける戦死者の霊をまつるようになった。

 ※「玉串」とは、神道の儀式で使われる榊(さかき)の枝である。

  こういうもの↓


 愛媛県が県のお金で靖国神社に玉串料を支払ったことを「宗教団体に対する支出」とみなすのかどうか、「地方公共団体(政治)と神道(宗教)の結びつき」とみなすのかどうか、「地方公共団体が中立の立場を守らなかった」とみなすのかどうか、つまり政教分離の原則に反するかどうかが問題となった。

 結果的に最高裁判所はこのように示した。玉串料を奉納することは社会の一般的な慣習であるとはみなせず、それゆえに玉串料を奉納した愛媛県は宗教的な目的や意義を持っていたと判断せざるを得ず、県が特定の宗教団体を特別に支援しているという印象を一般人に与えざるを得ない。つまり、政教分離の原則に反している。

 これは、最高裁判所が政教分離に関して初めて下した違憲判決だった。

 詳しくは 裁判例結果詳細 | 裁判所 – Courts in Japan をご覧ください。


靖国神社の参拝問題

 先程言ったように、「靖国神社」は東京都千代田区にある神社である。戊辰戦争や明治維新の際に亡くなった人の霊をまつるために創建されたが、後に日清戦争・日露戦争・第二次世界大戦などにおける戦死者の霊をまつるようになった。

 内閣総理大臣や国会議員・都道府県知事などの公職にある人が公的に靖国神社に参拝することが問題視されることがある。ここにもやはり「政教分離」に違反しているのかどうかという論点がある。

 しかし、「政教分離」以外の論点もある。

 例えば、太平洋戦争での戦死者やA級戦犯がまつられている靖国神社に政治家が公的に参拝することは戦前・戦時中の国家観や歴史観を公的に追認することになるという意見や、大日本帝国によって併合されたり侵略されたりした国々への配慮に欠けるという意見がある。

 ※「A級戦犯」とは、第二次世界大戦後の極東国際軍事裁判において、連合国が「平和に対する罪」を問うために起訴した戦争犯罪者のことである。