自衛隊ってなに?
最近、政府が防衛費を増額するための増税を検討しているというニュースが話題になっています。
ということで今回は、日本の防衛について理解する上で、絶対に知っておかなければならない「自衛隊」という組織について少し説明していきたいと思います。
※この記事は厳密性よりも分かりやすさに重点を置くものですので、より正確でより厳密な知識・情報にアクセスしたい方は政府機関などの公式ホームページをご覧ください。
自衛隊は何のためにある?
自衛隊法第3条(自衛隊の任務)には、以下のように書かれている。
自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。
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「独立」とは、「他国などによって支配されずに、国がその国自身の主権(国民や領土を統治する権力)を行使することができる状態にあること」である。
「秩序」とは、「集団内で定められている順序や決まりによって、その集団に調和や安定がもたらされていること」である。
自衛隊の第一の目的は「日本の平和を守るため、日本が他国に侵略・支配されないため、日本を安全に保つために日本を防衛すること」「必要なときに日本の安定を維持すること」であると言える。
また、第3条の第2項と第3項には以下のように書かれている。
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2 自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
一 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して行う我が国の平和及び安全の確保に資する活動
二 国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動
3 陸上自衛隊は主として陸において、海上自衛隊は主として海において、航空自衛隊は主として空においてそれぞれ行動することを任務とする。
ここで想定されている「平和及び安全に重要な影響を与える事態」としては、たとえば「災害」や「事故」がある。
地震や洪水などにより大規模な災害や事故が発生したときに人命を救助したり、行方不明者を捜索したり、被災者の生活を支援したり、被災地を復旧したりすることも自衛隊の重要な任務である。自衛隊のこの任務を「災害派遣」と言う。
ちなみに、大きな病院がない離島で救急患者が出たときに患者を病院のある島外に輸送することも自衛隊の任務となっている。
また、国際平和協力活動も自衛隊の重要な任務である。国際平和協力活動とは、テロや紛争、人道危機といった国際的な問題を改善・解決するために国際社会が協力して取り組む活動である。
※「人道危機」とは、本来であれば国家によって保障されなければならない自国民の安全や権利が、紛争や迫害、自然災害などによって保障されなくなっている状況である。
国際平和協力活動の中で特に覚えておくべきなのは、国連平和維持活動(PKO:Peacekeeping Operations)への協力である。国連平和維持活動とは、国際連合(国連)が世界各地の紛争を解決するために行う活動であり、各国の部隊によって構成される平和維持隊による停戦監視・武装解除・兵士の社会復帰、選挙の支援などが行われている。
1992年(平成4年)のPKO協力法の制定以降、自衛隊はカンボジア、イラク、インド洋、南スーダンなどに派遣されている。
自衛隊と日本国憲法
さきほど引用した自衛隊法第3条第2項に「武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において」と書いてあった。
2 自衛隊は、前項に規定するもののほか、同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、かつ、武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において、次に掲げる活動であつて、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされるものを行うことを任務とする。
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この決まりは日本国憲法第9条によって定められている。
日本国憲法第2章(戦争の放棄)の第9条には、以下のように書かれている。
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
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② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
日本国憲法は、国際紛争を解決するために武力によって威嚇したり武力を行使したりすることを禁じていて、そのために陸海空軍などの戦力を持つことも禁じている。
そのため、自衛隊は「武力による威嚇又は武力の行使に当たらない範囲において」活動することになっている。
第二次世界大戦・太平洋戦争後の日本は戦争の惨禍を繰り返さないことを決意し、平和国家を建設するために努力してきた。そのような日本の決意と努力が表れているのが、平和主義の理想を掲げる日本国憲法であり、第9条の「戦争放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」という規定であると言われている。
とはいえ、自衛隊は戦力に含まれるのではないか?という論点はたびたび話題になる。
防衛省・自衛隊:憲法と自衛権 (mod.go.jp) によると、上記の第9条の規定は、主権国家に当たり前に備わる「自衛権」までを否定しているわけではないそうだ。つまり、自衛隊は戦力(軍隊)ではなく、あくまで「自衛権」を行使する機関であるそうだ。自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」であるそうだ。
自衛隊は陸海空で日本を守っている
自衛隊には陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊がある。
陸上自衛隊は、日本の平和と独立を守るため、他国の勢力による日本への上陸作戦を阻止し、上陸された場合にはそれに対処する。また、必要に応じて公共の秩序の維持にあたる。
海上自衛隊は、日本の平和と独立を守るため、他国の勢力の海上からの侵略を阻止したり、艦船や航空機、潜水艦などの脅威を排除して海上交通の安全を確保したりする。
航空自衛隊は、日本の平和と独立を守るため、日本の空域を警戒監視し、不法に領空に侵入してくる他国の航空機に対して、戦闘機をスクランブル(緊急発進)させて領空侵犯に対処する。
自衛隊は誰が指揮しているの?
自衛隊は、シビリアンコントロール(文民統制)の原則の下で、文民で構成された内閣と国会によって統制されている。
内閣の代表者である内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持っていて、防衛大臣が自衛隊の職務を取りまとめている。
※「シビリアンコントロール」(文民統制)とは、文民(職業軍人ではない人)が軍隊の最高指揮権を持たなければならないという原則である。主権者である国民が、民主主義(選挙)によって選んだ文民の政治家を通して軍隊を統制するという原則であるとも言える。
自衛隊はどのような事情でできたの?
第二次世界大戦・太平洋戦争で敗戦した1945年以降、アメリカ軍を中心とした連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は日本を占領し、日本軍を解体した。1946年にはGHQの主導で日本国憲法が成立し公布された。
しかし1950年に日本の隣にある朝鮮半島で朝鮮戦争が始まり、アメリカ軍が日本から朝鮮半島へ出動することになった。
アメリカ軍が少なくなった日本で治安が悪化したり共産主義が台頭したりするおそれがあったため、日本の治安を維持するという目的で、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーの指示で1950年に「警察予備隊」が創設された。
警察予備隊は1952年に「保安隊」になり、保安隊は1954年に「自衛隊」になった。
※日本で共産主義が台頭することが心配された理由としては、1949年に共産主義を掲げる中華人民共和国(中国)が成立したことで、日本にも共産主義化の流れが波及するおそれがあったということがある。資本主義陣営のアメリカ合衆国は社会主義・共産主義陣営のソビエト連邦(ソ連)との冷戦を戦う中で、ソ連や中国の隣にあり共産主義との戦いの最前線となっている日本や朝鮮半島の共産主義化を食い止めたいと思っていた。